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前ページ次ページKNIGHT-ZERO だけど…大好きだったな…… 伊藤誠 ルイズは苦悩していた 幼い頃を一緒に過ごした旧友であり、敬愛するトリスティン王女であるアンリエッタは婚姻を控えていた ルイズは学院を訪れたアンリエッタから、誓いの場で祝詞を詠み上げる大役を仰せつかってしまったのだ 祝詞の文言は詠み手であるルイズが草案する慣わし、しかし彼女は詩の素養にはあまり恵まれなかった 学院の宝物庫にある始祖ブリミルの祈祷書がルイズに預けられた、中は白紙で何ひとつ文字が書いてない 製本職人によって数多く複製された祈祷書の内のひとつで、婚姻の儀式における小道具に過ぎないらしい しきたりに従ってルイズの指に嵌められた宝石、この水のルビーの指輪の方がよほど価値のあるものだった アンリエッタの結婚は多分に王家の思惑の混じったものだったが、それについては深く考えないようにした 姻戚を結ぶこともまた外交の手段だったこの時代、国家のための結婚はとても名誉あることとされていた ルイズは学院の近隣にある草原で始祖の祈祷書を閉じると、KITTのドア下部にある物入れにしまった 公式資料に多いA4ファイルに合わせ設計したドアポケットは、この祈祷書の為に誂えたかのようだった ひとつため息をついたルイズは目をこすり、KITTのドライヴァーズシートを倒して伸びをする KITTに助言を頼んでみたが、「その神に帰依していない私には関与できません」と、釣れない返事 傾けたKITTのドライヴァーズシートに寝転がりながらドアポケットから出した祈祷書をもう一度開く 白紙でも眺めていれば何か思いつくんじゃないか、と思い、青いルビーの指輪が輝く左手でページを繰る ルイズが開いた瞬間に何か文字が浮かび、アンリエッタから贈られた指輪の青い石が光ったように見えた きっと目が疲れているんだろう、と思ったルイズは、祈祷書を閉じて再びドアポケットに放り込むと ルイズにとってのお気に入りの時間である、静かな草原でのKITTとの昼寝を楽しむことにした KITTはルイズが祈祷書を開いた時の奇妙なエネルギー反応について彼女に報告しようと思ったが シートに頬をすりよせながら眠るルイズの幸せそうな寝顔を見ている内に、その案は却下された ルイズとシエスタ、KITTを巡っての二人の女の意地をかけた鞘当てと諍いは未だに続いていた かつてKITTがシエスタと密会?していた夜の時間を、KITTを部屋に持ち込んで一緒に寝る事で 独占していた思っていたルイズは、自分が授業を受けている昼間にKITTとシエスタが会ってる事実を 学院の昼休みに食堂で給仕をするシエスタ自身の口から聞いた時、怒りの余り「かはっ」と息を吐いた 「KITTさん、わたしのひい爺さまと同じ世界から来たんですって、それでわたしの午前の休み時間に わざわざわたしの所まで会いにきてくれたんです、わたしにKITTさんの故郷の愛の歌を聞かせたいと」 シエスタのその言葉にもだいぶ誇張があった、彼女もまた背中にKITTへの独占欲の炎を燃やしていた KITTは内部のメモリーに数曲入っていた日本の歌について、シエスタに幾つかの質問をしたいと思い 日本語など判る訳ないのにそのリズムを何度も聞きたがる彼女の求めに応じて日参していただけだった ただ、雨の中でシエスタと聞いた「天城越え」を自分のメモリーから消す事は決して無いだろうと思った マルトー親父の計らいでメイドの仕事を午後に集中させる予定を組んだシエスタは、ルイズの授業時間と 重なるくらいの午前休みを貰っていて、その時間にしばしばKITTとのドライブを楽しんでるらしい ルイズは自室に帰ると、激情に駆られて金切り声を上げながらKITTのドアをガンガン蹴りまくった 「ルイズ、おやめなさい、私にこんな真似をしてもあなたの名誉と靴裏を無駄に減らすだけです」 慇懃な物言いに余計腹がたったルイズは、攻撃を蹴りから拳に切り替えてKITTのボンネットを ゴンゴンと叩いていたが、手の痛みに何だか悲しくっなたルイズはKITTの前で泣き出してしまった 「KITTはなんでわたし以外の女にプレゼントあげるの?なんでわたし以外の女に優しくするの? あんたはわたしの使い魔でしょ?わたしだけ見るの!わたしだけを乗せるの!嫌い・・・だいっきらい!」 KITTはただ泣くだけのルイズを前に成す術なく困り果てた、かつてのパートナーであったマイケルに 心の中で助けを求めた、女性の誘惑に弱いマイケルが得意げに語ったアメリカ人らしい単純な口説き方 女の機嫌を直すのは、プレゼントともう一つ、後者に関してはKITTの体では不可能な事だったので KITTは前者の方法を選んだ、ケンカに効く薬、とても単純で、そして投与のさじ加減の難しい物 「ルイズ、あなたにこの装備を教えるのはもう少し先と思っていましたが、少し予定を早める事にします」 KITTはコントロールパネルの右下にある、組成分析装置を兼ねた引き出し状のボックスを開けた 中には兵隊が腰に巻き、銃や剣を吊る革ベルトをうんと小さくしたような物が入っていた、黒く柔らかい 「ルイズ、あなたにこれをあげます、そろそろあなたはこれを使うようになってもいい頃でしょう」 黒い合成樹脂のリストバンド、ナイト財団の研究所がカシオ社との協力で開発したKITTの付属装備 初期Gショックに似た外観、マイケルとの活動中に欠点だった筐体強度と通信距離を大幅に改良されていた 「これは・・・・・・腕輪?・・・なんか柔らかいのに硬い・・・ヘンなの・・・時計?・・・腕輪に時計がついてるわ」 懐中時計の存在するこの世界では、回転盤で時刻を表す機械式のデジタル表示時計も既に作られていた それは時計職人の腕を誇示する見世物だったが、ルイズは幼い時に訪れた王都でそれを見た事があった 「時計は機能の一部、それはコミュニケーター・リンクです、離れていても私と相互の通信が出来ます」 今度はシエスタがそれを部屋の戸口からこっそり見ていた、無遠慮にルイズの部屋に駆け込んでくる 「あーっ!ミス・ヴァリエールずるいです!、KITTさん!わたし以外の女にプレゼントなんてひどい! あの素敵な夜に、私がマイケルと同じ魂を感じるのはあなただけ、って言ってくれたじゃないですか!」 早速そのコミュニケーター・リンクを手首に巻いたルイズは、シエスタに一歩も引かず薄い胸を突き出す 「何よ!KITTはわたしの使い魔よ!夜は一緒に寝てるの!色々してんのよ!心だって通じてるの!」 「わ・・・わたしだって!・・・・・・その・・・怒んないでくださいよ・・・・・・舌、入れました・・・排気管に・・・」 ルイズは赤面した、今すぐ同じことをKITTにしてやりたかったが、それだと負けを認めたようになる シエスタも赤面した、私はいやらしい女かも、でも"敵"はもっといやらしいことをしてるかもしれない それぞれがお互いに向けていた敵意を、くわばらくわばらとばかりに沈黙していたKITTに向けた 「KITT!」「KITTさん!」 二人は声を合わせて詰め寄った 「「ハッキリして!」」 「え・・・・・・それは……ルイズとは契約を交わし・・・シエスタさんには優しくしてもらい・・・その・・・私は・・・」 赤く光るフロント・インジケーターは、人工知能の優柔不断な心を表すかのように左右に揺れていた 前ページ次ページKNIGHT-ZERO
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トリステイン魔法学院はメイジ達の学院である。 学院では王国中から選ばれた優秀な若者達が、オールド・オスマンの下ハルケギニアの未来を担う最先端魔法を学んでいる。 そして学ぶ傍ら若者達は王室の巨大プロジェクト、巨大空中人工島・スカイアカデミア島建造計画に若い夢を燃やしていた。 コルベールの教室で、1人の生徒がスカイアカデミア島の資料を破り捨てた。 「ミスタ・コルベール!」 ルイズは素早く立ち上がった。 「ん?」 「こんな空中島の設計なんて、馬鹿馬鹿しくてやっていられません!」 「ルイズ!」 キュルケはルイズにそう言ったがルイズの目はキュルケを睨んだ。 そしてルイズは破り捨てた資料を床に放り投げた。 「ミス・ヴァリエール、スカイアカデミア島での実験が可能になれば様々な成果が期待されますよ。新しい薬や新しい食料、病気や飢えに苦しむ人達がどれだけ救われる事か……」 「そうだよ!」 「そうよ!」 マリコルヌ・モンモランシーもルイズに反発した。 「それを皆さんでやるのですよ。人々の幸せのために……」 「愚かな人間の事など考える必要は無いわ! 私はもっともっと高度な魔法を極めたいのよ!」 ルイズはそう言うと教室を後にした。 その夜、ルイズの部屋の明かりが消された。 ルイズは黙々と教室を出た。 部屋の姿見には、 『welcome to...VOLT!』 と表示され、鏡いっぱいに、 『OK』 の文字が点滅しながら表示された。 ルイズはゆっくり廊下を歩いている。 一方その頃研究室では、魔法強化服の装着実験が行われていた。 「よし、完璧! 実験開始よ!」 「やったー!」 マリコルヌ・モンモランシーは砲弾型カプセルに飛びついた。 ギーシュ・タバサは2人を制止しようとするが、逆に突き飛ばされた。 そしてマリコルヌ・モンモランシーはカプセルに乗り込んだ。 「やったー! 魔法強化服の実験第1号は俺達に決まり! ギーシュ、キュルケ、文句ねえよな?」 「マリコルヌ、それは無いよ!」 「情熱の差よね、タバサ。どうしてもスカイアカデミア島に行きたいっていう、この熱いハートの差」 モンモランシーは、スカイアカデミア島のイメージイラストを見ながらタバサに言った。 「ね?」 今度は使い魔に言った。 ルイズはまだ黙々と廊下を歩いていた。 ギーシュはカプセルの起動呪文を詠唱した。 「スタート!」 そしてカプセルは起動した。青い光をほとばしりながらカプセルが動いている。 だが突然カプセルが回転を始めた。 パワーを抑える呪文を詠唱しようとするが、カプセルは爆発した! そして壁に穴が開いた! カプセルが庭に転落したのだ! 「マリコルヌ!」 「……モンモランシー……」 「マリコルヌ!」 「大丈夫か!? おーい!」 「……モンモランシー……」 「マリコルヌー!」 マリコルヌはゆっくり目を覚ました。 「うあー、効いたー……」 そしてマリコルヌはモンモランシーを見つける。 「あっ、モンモランシー! 大丈夫か!?」 「うん」 強化服の装着実験は成功したようだ。 「見てくれ! この服を!」 「成功したよ!」 キュルケ・ギーシュ・タバサの3人は喜んだ。 「行こ!」 3人は素早く庭に向かった。 「流石強化服ね、びくともしないわ!」 「ああ!」 マリコルヌ・モンモランシーが喜びを分かち合ったその時、閃光がほとばしり時計の針が素早く回転している! 3人は庭にたどり着いたが、突然の出来事に驚いた。 すると正体不明の飛行物体が庭に着陸、扉が開きルイズが素早く乗り込む。 「ルイズ!」 モンモランシーの声に気付いたのか、ルイズはモンモランシーの前に振り向いた。 「一体あなたは……!?」 そしてルイズは杖を取り出し、 「危ないっ!!」 「ああっ!!」 ルイズは呪文を詠唱し爆発を発生、爆発はマリコルヌ・モンモランシーの体を直撃! 「ああ……っ!」 「あああー……!」 2人は倒れた! ルイズは魔法学院の紋章を引きちぎると、ルイズは飛行物体の内部に入る。 ゆっくり扉が閉じられていき、飛行物体は発進した。 「一体あんたはどこへ行くのよ……?」 キュルケら3人は、空に飛んでいく飛行物体を見つめていた。 そしてキュルケは庭で何かを見た。 「マリコルヌ……!」 「え……?」 なんとそれはマリコルヌ・モンモランシーの死体だった! 「マリコルヌー!!」 「……嫌……」 「マリコルヌー!!」 3人は叫びながら2人の亡骸に向かった。 「モンモランシー!」 「おい、マリコルヌ! おい! おいっ!!」 キュルケ・ギーシュはすすり泣く。 「……なぜこんな酷い事を……」 飛行物体は素早く空を飛んでいた。 「モンモランシー! どうして、どうして……、モンモランシー……」 ――ゴロゴロ…… 音が鳴って夜空に稲光が走り、そして雨が降り出した。 コルベールは3人を見つける。 キュルケはマリコルヌの体にコートを被せた。 「マリコルヌ……、マリコルヌ……」 ギーシュは泣き叫んだ。 一方、飛行物体は既に大気圏を離脱していた。 そして謎の物体が宇宙にあった。 そして2年後の春、スカイアカデミア島の離陸式が行われていた。 選抜された研究員の発表を終えると、生徒は喜びに満ちて帽子を投げた。 ブラスバンドの演奏に合わせ、研究員はスカイアカデミア島に向かった。 一方キュルケ達は、マリコルヌ・モンモランシーの墓地にいた。 2人の墓に花と遺影を供えた。 「ついにアカデミア島が完成したわよ。でもあたし達はあんた達の仇を取る事を決して忘れちゃいないからね」 マリコルヌ・モンモランシーが研究員になりたがっていた、スカイアカデミア島。 しかしなぜこんな事になったのか、思いもしなかった。 3人は波打つ岬を見つめる。 その時、コルベールが墓地にやってきた。 「やあ。私も報告に来たかったのですよ」 コルベールは墓の前で手を合わせた。 「……ミスタ・コルベール……」 タバサは言った。 「何ですか?」 「……この2人……スカイアカデミア島に入れて……」 そう言うとタバサはマリコルヌ・モンモランシーの遺影を見せた。 「……この2人……どれだけ行きたがってた事か……」 タバサは2人の遺影を合わせた。 「ええ……」 その頃、スカイアカデミア島の離陸準備が着々と進められていた。 乗組員の1人がマリコルヌ・モンモランシーの遺影を置いた。 キュルケ達はスカイアカデミア島の見える庭に着いた。 たくさん人が集まっている。 そしてカウントダウンが開始される。 ゼロになると同時に、スカイアカデミア島は離陸した! 生徒達が喜びに満ちていたその時、謎の飛行ゴーレム群が空に飛来した! 「何よあれ!?」 飛行ゴーレムは生徒達の後ろに迫るが、何とか回避した。 次に飛行ゴーレムは、光線をスカイアカデミア島に向けて発射! 巨大風石は被弾し、島内で大爆発が起こった! 警告音が鳴り、コルベールは驚きの顔を見せる。 スカイアカデミア島の内部は炎が燃え広がっていた。 「……皆が……皆が……」 キュルケ達は走り出した。 そして炎に包まれているスカイアカデミア島は街に落下! 大爆発が起こった! 光線が街に、そして魔法アカデミアに襲ってきた! 人込みを振り切りながらキュルケは走る。 タバサはシルフィードに乗って爆発から逃れた。 ギーシュは倒れながらも一生懸命走る。 だがキュルケは爆風に巻き込まれて吹き飛ばされた。 3人は無事に合流したが、光線が3人に迫り大爆発した! しばらくして、魔法学院は瓦礫の山と化した。 キュルケは倒れているタバサを見つける。 「タバサ、大丈夫!?」 タバサはゆっくりと立ち上がる。 ギーシュもキュルケの元へやってくる。 「キュルケ!」 「ギーシュ!」 「一体あいつら何者なんだ!?」 その時、飛行ゴーレムの1機がゆっくりと止まる。 扉が開き、そこから5人の人物が降りてくる。 だがその人物は、ルイズとその5人の使い魔のうちの4人にそっくりだった! キュルケの脳裏で、2年前の出来事が甦る……。 「ルイズ……!」 ギーシュ・タバサも驚きの顔を見せる。 「あら、下等生物は生命力が強いわね……」 ルイズそっくりの少女は足で花を踏み潰した。 「黙りなさい! あんた達こそそれでも人間なの!?」 「……あの日から私は、人間を捨てたのよ!」 2年前、武装頭脳軍ボルト基地・ヅノーベース。 ヅノーベース艦内でルイズはある男に呼ばれた。 「あなたは……!」 その男こそルイズが召喚した使い魔の5人目にして、「ゼロ」のふたつ名で呼ばれていた彼女を地・水・火・風・虚無の全属性を使いこなすまでに成長させた師匠。 武装頭脳軍ボルト首領・大教授ビアスである。 「大教授……、ビアス……!」 ルイズは敬礼した。 「私は武装頭脳軍ボルト、ドクター・ヴァリジェルとなったのよ!」 「そして俺は、ドクター・ケンプ!」 「ドクター・マゼンダ!」 「ドクター・オブラー!」 「ドクター・アシュラ!」 「あんた達……!」 キュルケは驚きを隠せなかった。 「ハルケギニアは真の天才・大教授ビアスを中心とした、天才だけによって支配されねばならないわ!」 「そのために、お前達の様なクズを掃除しに来たのさ! フィンガー・ガン!」 マゼンダは右手の人差し指からフィンガー・ガンを発射した。 「どうなってんだ!?」 「あはははは!」 マゼンダは声高く笑った。 「美獣ケンプ!」 ケンプは苦しみだして、体格や姿も変わり美獣ケンプに変身した。 「化け物か、君!?」 ケンプは光線を発射、3人は倒れた。 「見たかしら! 大教授ビアスの元で2年間身に付けたこの科学力を!」 「あんた達に2年の月日があったなら、あたし達にも2年の月日があったのよ!」 「……2年前……あなたが空へ消えてから……私達は外敵の存在を確信した……そして密かに準備してた……」 「マリコルヌとモンモランシー、そして、多くの仲間や人々の仇を、今晴らしてやる!」 「あたし達は、生きとし生けるものを守る戦士!」 キュルケは、ハヤブサのエンブレムが刻まれた右手の腕輪……かつて彼女達がフーケから取り戻した「天獣の輪具」と呼ばれていた宝物庫の秘宝・ツインブレスを突き出した。 「レッドファルコン!」 次にそのブレスを右手のツインブレスに連結させ、レッドファルコンに変身! 「イエローライオン!」 ギーシュは「地獣の輪具」と呼ばれたライオンのツインブレスを連結し、イエローライオンに変身! 「……ブルードルフィン……」 タバサは「海獣の輪具」のツインブレスを連結し、ブルードルフィンに変身! 「超獣戦隊!」 『ライブマン!!』 3人は名乗りのポーズを決めた! ヴァリジェル・ケンプ・マゼンダ・オブラー・アシュラは驚く。 「この強化服……、2年前の物とは違うわよ!」 「戦闘兵ジンマー!」 ボルトの戦闘兵・ジンマーがライブマンに迫る。 「ファルコンソード!」 ファルコンは、ファルコンソードを取り出した。 「行くわよ!」 3人はそれぞれに分かれて攻撃を仕掛けた。 ファルコンはジャンプし、ファルコンソードでジンマーに斬りかかる。 ジンマーの頭部が真っ二つに斬り裂かれた。 「ライブラスター!」 ファルコンは光線銃・ライブラスターで攻撃。 ジンマーは自爆し、ファルコンは爆風に飛ばされた! ドルフィンは弓状武器・ドルフィンアローで攻撃。 だがジンマーは鎖を投げつけ、ドルフィンの首に巻き付けた。 電撃がドルフィンに炸裂する! ライオンはグローブ状の武器・ライオンパンチで攻撃。 ジンマーは頭部を飛ばし目から光線を発射。 次にライオンは、ジンマーに抱きかかり壁に叩きつけた。 「ライブラスター!」 ライオンはライブラスターを発射、ジンマーの右腕を撃ち落とした。 だが右腕が突然動き出し、飛び出してライオンの首を掴んだ! 「どうなってるんだ!?」 ヴァリジェルは手にした杖から光線を発射、ライオンを弾き飛ばした! ドルフィンが倒れる。 「大丈夫、ドルフィン!?」 「……ええ……」 ドルフィンはゆっくりと立ち上がる。 「エルボー・ガン!」 マゼンダの右肘に仕込まれたエルボー・ガンでの攻撃を、2人が受ける! 「パーム・ガン!」 今度は左手に仕込まれたパーム・ガンを発射、2人は大ダメージ! 「ふふふふ……、ライブマン、ここまでね」 「おのれ!」 「死になさい!」 マゼンダがとどめを刺そうとしたその時、もの凄い振動が起こった。 四足獣型ゴーレムが走っている。 「あれは……!?」 「ランドライオン!」 ランドライオンは突進し、ヴァリジェル・マゼンダを弾き飛ばした。 ランドライオンにはイエローライオンが乗っている。 「よし、今よ!」 「……ええ……」 ファルコン・ドルフィンは走り出した。 「ボフラー戦闘機!」 ボフラー戦闘機はランドライオンに攻撃するが、ランドライオンはそれをかいくぐり洞窟に入った。 そしてランドライオンは洞窟の壁を突き破る! 「行くぞ!」 ランドライオンはボフラー戦闘機の尾に噛み付きスイングして、戦闘機を墜落させる。 「ライオンジャーンプ!」 ランドライオンは素早くジャンプし、山を登る。 ランドライオンに気を取られていたボフラー戦闘機は山に激突する。 そしてランドライオンは山頂に立った。 ファルコン・ドルフィンはなおも攻撃を受け続けている。 「2人が危ない! ライオンカノン、発射!」 ランドライオンはライオンカノンをボフラー戦闘機に向けて発射したが、ファルコン・ドルフィンは未だ攻撃を受け続けている。 かつての友は、悪魔に魂を売った恐るべき敵として戻ってきた。 果たしてライブマンは、この狂気の天才達に勝てるのであろうか!?
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越前VSギーシュから二日後… 「わざわざスイマセン。越前さんにも手伝ってもらっちゃって。」 「気にしなくて↓いいんだよぉ。これ位私も手伝わなくっちゃあぁ↑…それに今日は天気がよくていい日だぁ!」 相変わらず無駄に高くてで上下の波のある声だ。今はシエスタと洗濯物を干す作業を手伝っている。 あの決闘後もモチロンビビられまくった越前だがルイズからの説明もあって自分を助けてくれた事を知り 今はとても親しくなっている。食堂の面々にも決闘の事が伝えられてえらく気に入られていた。特にコック長のマルトーは 「クソ生意気な貴族の小僧をズタボロにしてくれたんだ!大歓迎だぜ!我らが剣よ!」 と盛大に歓迎してくれたが結局誰にも人間だと分かってもらえる事はついになかった。 まあこればっかりは仕方あるまい。でも越前は満足していた。話せば分かってくれる人達も多いし ここも結構悪くない……嘘偽りなくそう思う事ができた。あの少年もきっと心清くなって反省している に違いない。風が気持ちよく吹く中、ご主人様のパンティーを頭にかぶりながら異世界も悪くないと思っていた。 「……………あの、越前さん?それは被るものではありませんよ?」 「おっと、ボケっとしていたぜ。気がつかなかったZE!干さなきゃNE☆HAHAHA!」 (この人…本当に大丈夫かしら。) 決闘で得た信頼は失われつつあった。 一方こちらは越前のご主人様。 「ルイズ。ホントにあの使い魔に何もされてない?顔色悪いわよ。」 「何かって何よ。アイツは今洗濯物干しにいってるわよ。」 ルイズの部屋にはその隣人のキュルケが来ている。 本来の決闘後の展開なら越前に惚れるはずなのだがさすがに今回はそれはない。むしろ不信感マックスである。 「そう…それならいいんだけど…私はどうしてもアナタの使い魔が信用できないのよね。」 「アイツは…確かに変な奴だけど仕事は文句言わないでこなしてくれるし。変な声出す けど悪い奴ではないわ。何者か分からないけどね。」 ギーシュとの決闘の時。越前がギーシュの腕を掴んだ時に現れたあの『赤い扉』 冥界に通じる門のように妖気や邪気があふれんばかりのその扉にギーシュは連れ込まれて 今、ギーシュはまだ正気に戻ってはいない。扉からズタボロで出てきたギーシュは後に目覚めると片言に 「オイナリサン……オイナリサン……ソレハ私ノオイナリサン…」 とブツブツつぶやきっぱなしで目も死んでいる。ある意味心清くなったギーシュを今はモンモランシーが介護している。 ギーシュの件もありルイズの身に何か起きていないか心配でキュルケは様子見でルイズの部屋に来ていた けど、その心配もないみたいだしルイズ自身はなんだかんだでいいやつよ。と言っている。問題はなさそうね。 「それよりもルイズ。早く授業に行きましょうよ。遅れるわ。」 「ゲ!もうそんな時間なの?もうちょっと早く言いなさいよっ!!ああ~~~もう!!」 「おやおや皆さん。使い魔の儀式はちゃんと成功したようですね。私はとてもうれしいですよ。」 新任の教師に激励されるけどあんまりうれしくはない。今は錬金についての授業である。 生徒はみんな自分の隣に使い魔を連れている。ルイズも例に漏れず隣には越前がどーんと立っていた。 授業が始まる前にルイズは越前に対して 「いい?絶対喋っちゃだめよ。大人しくしていなさい。わかった?」 「わかったぜ。」 と言った会話があるので越前は大人しくしている。言う事聞いてくれるしいいやつなんだけど…… 独特の不気味さにはまだ慣れない。むしろ黙ってズーンとしてるほうがよっぽど怖い。 「ええっと……ミス・ヴァリエールは変わった使い魔をお連れですねえ」 「ドラゴンです。」 「それはちょっと無理があるのでは」 「ドラゴンです。」 ルイズはドラゴンって事で押し切った。無理アリまくりだけどルイズは本当はドラゴンを使い魔にしたかった のでせめて越前はドラゴンの一種と言う事で捉えていた。悪魔って言ったほうが全然説得力はあったに違いない。 自分の使い魔願望丸出しのルイズを尻目に授業は始まった。 授業内容はルイズにとってわけのない事である。ルイズは勉強はよくできる。 この授業の内容も予習でとっくにやってある。100点取れちゃうわよってな位である。 あくまで『知識』として。だが実技をやるとなるとそれは…… ルイズはあまりネガティブな事を考えるのはやめにした。自分には強い使い魔がいる。 越前は確かに変な奴だけどあのギーシュをコテンパンにやっつけちゃうくらい強い。本人は違う世界から 来た『人間』と言っているけどどこかの小説じゃあるまいし。信じられない。でもアイツは嘘をつかない。 (アイツ……本当に別の世界からやってきたのかな。) ルイズはとなりの越前の顔を見る……が越前はそこにはいない。 あれ?アイツどこにいったのよ?周りを見回してみるといつの間にかキュルケのサラマンダーの隣に立っているではないか。 越前はルイズの言う事をちゃんと聞いて静かにしていた。が無言で腕をグルグルプロペラのように回しながらそこらを 無言で高速移動している。他の使い魔の所にも行ったり来たりで使い魔の主人達はいきなり接近する越前にビビリ まくっている。無言のほうが怖い。みな声を出さないように悪魔の所業を堪えていた。 「こらあ!!アンタじっとしてなさいって言ったでしょ!!このバカポリゴン!」 「ミスヴァリエール!授業中に何大声出しているんですか!!この錬金はアナタにやってもらいましょう。」 「静かにしてないからだぜ。まったく世話のかかる子だなぁルイズは」 「アンタのせいでしょうがーーーーー!!!」 ドグシャッ!!!! 「お……お母さん…」 二個目の大事なものも失った気がする越前であった。 越前のせいでいきなりピンチな状況に立たされたルイズ。 冷たい汗で全身グッショリである。 「あの、ルイズにやらせるのはやめたほうが…」 いいわ!キュルケ!その調子で私からキュルケに変わって頂戴! 「そんな人をバカにするような言い方しちゃいけません!彼女は非常に努力家だと聞いております。きっとうまくいきますよ。ねえミス・ヴァリエール?」 このババアーー!!!賛同もとめるんじゃねーわよ!チクショーーーー!!やってやるわよ!!!! 他の生徒はバナナをおいしそうに食べているマリコルヌ以外ルイズの邪気を感じ取ってそそくさと部屋から退散し始めていた。 「そおおりゃああああああああ!!!!!ビビデバビデブーーー!!!」 チュドーーーーーーーン!!! 他の生徒の予測通りにルイズが『錬金』をかけたはずの石は『大爆発』を起こし教師は爆風で窓の外へ吹っ飛んで行った。 爆発によって吹き飛ばされた教壇が中にいた越前に向かって飛んでいったが越前は身近にあったマリコルヌをしっかりと掴んで 「せっかくだから、俺はこの少年で教壇をガードするぜ!」 「グホァ!!!」 せっかくでガードに使用された少年はもう二度とピクリとも動く事はなかった。
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前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第九十八話「恐れていたレッドキングの出現報告」 どくろ怪獣レッドキング 登場 ……ルイズとキュルケの喧嘩から端を発した、二人の決着の舞台となるミスコンの本番当日が 遂にやって来た。出場する選手は、他の人はルイズとキュルケの熾烈な争いに割って入るのを 躊躇ってしまったからか、この二人だけ。……イベントとして大丈夫なのか? そんな俺の懸念をよそに、ミスコンはつつがなくスタート。第一審査の学力対決――二人が一時間 延々とテスト問題を解いているという内容で、恐ろしく地味だった――はルイズに分がありそうでは あったが、第二審査の体力対決――普通の体力測定で、こっちも恐ろしく地味だった――は体格が 上のキュルケの方が勝っている感じだ。 そして多分勝負の分かれ目となる、肝心の水着審査! と自己アピール。キュルケはやはりと 言うべきか、この勝負に一番の力を入れてきていて、とんでもなく際どい水着とよく纏まった アピールを披露したのだった。これはルイズ大分不利なんじゃないか? 心配する中、壇上に立ったルイズは――先日買い物に行った際に、俺がルイズに似合うと 言ったあの水着を着ていた。 な、何だよ。結局、あれを買っていたのか。俺の意見なんかどうだっていいみたいな顔を しておきながら……そういうの、かわいいじゃんかよ。 そしてルイズは、何故このミスコンに出場したのかという質問に対して、こう答えた。 「そ、それは……。一番の動機は、クラスメイトから勝負を挑まれたからです。わ、わたしは、 挑まれた勝負から逃げることはしません。そして、その決断をする勇気は……ある人がくれた ものです。だから、わたしは……こうして、この場に立っています。り、理由は、その二つです」 ……ルイズに勇気を与えた人、か。それってどんな人なんだろうな。……まさか、俺…… じゃあないよな。そこまで行ったら嬉しすぎるんだけどなぁ。 ともかく、ルイズのアピールはたどたどしいところもあったが、真摯な気持ちがありありと こもっていて、情熱の点ではキュルケにも負けないものだった。観客からの感触も悪くない。 勝負の行方はいよいよ分からなくなってきた。果たして、投票の結果は――。 「栄えあるミスに選ばれたのは……ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!」 結果は、僅差ながらもルイズの勝利であった! よかった……キュルケには悪いけれど、ルイズはかなり不利な勝負に向けて、あれこれと 努力を積み重ねていたからな。俺も立場上は両方の応援代表だったけれど、内心ではどこかに ルイズに勝ってほしい気持ちがあった。それが叶って、すごく嬉しい気分だ。 「優勝したルイズさんには、トロフィーとティアラが贈られます」 再び壇上に上がったルイズは、司会進行からトロフィーとティアラを授かる。トロフィーを抱え、 ティアラで着飾ったルイズの姿は……普段のつっけんどんな態度が嘘みたいに、とても輝いて見えた。 「さぁ、勝者としてのお言葉をどうぞ」 自分の勝ちなのに、どこか信じられないという風にポカンとしていたルイズだったが、 司会に求められて慌てて口を開いた。 「あの、その、ありがとうございます! う、嬉しいです……!」 「この優勝に自信はありましたか?」 「自信なんて……なかったです。だ、だから、信じられなくて。本当に、本当に、嬉しいです!! ありがとうございます!」 ルイズ、心の底から感激しているって感じだ。本当、よかったな、ルイズ……。 「おめでとう、ルイズ!」 「おめでとーう!」 「おめでとう、ルイズさん!」 クリスやギーシュ、春奈たちの学校の仲間たちもルイズに称賛の言葉を贈った。 「あれが優勝のコメント? まるで子供ね。けど、ルイズらしいわ」 「……ん」 モンモランシーは少々手厳しいコメントだったけれど、嫌味らしさは微塵もなかった。 タバサもそれにうなずく。 「まさか、ルイズに負けるなんて……」 キュルケは少なからずショックを受けていたようだったけれど、悔しさは見せずに勝者へ向けて 惜しみない拍手を送った。他のみんなも手を叩き、ルイズは万雷の拍手で勝利を祝福された。 色々大変だったけれど、ミスコンもこれで大団円ってところだ――。 「ピッギャ――ゴオオオウ!」 しかしその時、体育館の外から耳をつんざく何かの雄叫びが聞こえてきた! 今のは、経験から言うと……また! 「ピッギャ――ゴオオオウ!」 気がつけば、いつの間にか外の町の真ん中に大怪獣がそびえ立っていた! あいつは、図鑑を開かなくても知っている! 怪獣の中でも一、二位を争うほど有名な奴だ! その名はレッドキング! ……何だか写真で見たのとちょっと違うような感じもするけど。 「ピッギャ――ゴオオオウ!」 レッドキングは雄叫びを発しながら、足を振り上げて家屋を踏み潰し始める! ――深夜のトリステイン、一地方の村にて。 『ピッギャ――ゴオオオウ!』 「うわぁぁぁぁッ!」 「み、みんな起きろー! 怪獣だー!」 寝入っていた村が、今は大パニックに覆われている。突如として大怪獣が出現し、村の破壊を 始めたからだ。村人たちはたまらず飛び起き、大慌てで避難していく。 怪獣の名はレッドキング――限りなく本物に近い、イミテーションではあるが。 レッドキングは人間など到底及ばない暴力を以て村を蹂躙するが、正義を守るチーム、 ウルティメイトフォースゼロがそれを見過ごしはしない。ほどなくして村にミラーナイトが 駆けつけたのだった。 『とぁッ!』 池の水面から飛び出したミラーナイトは、すかさずレッドキングに飛びかかっていき飛び蹴りを 仕掛ける。相手の先手を奪う、華麗ながら速い攻撃である。 だが。 スカッ。 『な、何ッ!?』 ミラーナイトの飛び蹴りは、レッドキングの身体をそのまま突き抜けてしまったのだった。 空を切って着地したミラーナイトは言葉を失う。今のはどういうことなのだろうか。 今度は手の平を広げて掴みかかるも、やはり手はレッドキングをすり抜ける。全く触れることが 出来ないのが、これで確定した。 『ピッギャ――ゴオオオウ!』 そうだというのに、レッドキングの方からは物体に干渉し、今もまた家屋を崩したのだ。 それはつまり、このレッドキングが単なる幻影の類ではないことを意味している。 『こ、これはどうなってるんだ……? こちらからは指一本触れることすら出来ないのに…… 向こうは建物を破壊しているなんて!』 怪奇現象に直面してミラーナイトは混乱して叫んでいた。 「うわあああああッ!」 「怪獣だぁーッ!」 祝賀ムードだった体育館は一転、悲鳴の合唱が発生して生徒たちが一斉に避難していく。 「ゼロ!」 『おうよ!』 そんな中、俺はこっそりと人の間から脱け出て、物陰に隠れた。もちろん、変身して レッドキングと戦うためだ! 「デュワッ!」 ウルトラゼロアイを装着し、ゼロに変身! 飛んでいったゼロは、レッドキングの前で 巨大化して着地した。 『やめな! こっからは、このウルトラマンゼロが相手になってやるぜ!』 「ピッギャ――ゴオオオウ!」 構えを取って挑発するゼロに気がついたレッドキングは、持ち前の好戦さを発揮してすぐさま こっちに向かって突っ込んできた! 『ピッギャ――ゴオオオウ!』 ミラーナイトをまるで無視して村を破壊していくレッドキング。ミラーナイトは一切の手出しが 出来ずに見ているしかない悔しさを味わわされていたが、ここでレッドキングに異変が発生。 唐突に挙動を変え、何もない虚空に振り返ったかと思うと、そっちに向かって駆け出したのだ。 『な、何だ?』 呆気にとられるミラーナイト。更にレッドキングはパンチやキックを繰り出すが、そこにはやはり 何もないのだ。 「ピッギャ――ゴオオオウ!」 『くッ! ぬおッ!』 レッドキングの繰り出すパンチやキックをガードするゼロだが、レッドキングはパワー型怪獣を 代表するような奴。一発一発の重量が尋常じゃなく、食らう度にゼロはふらつく。 『何の! やられたままじゃいられねぇぜ!』 しかしゼロは気を取り直すことで態勢を立て直し、レッドキングに肉薄。そして素早く 相手のつま先を踏みつけた! 「ピッギャ――ゴオオオウ!?」 これは痛い! どんな生物もつま先までは頑丈ではない。レッドキングも同じなようで、 悶絶して動きが止まる。 ゼロはその隙を突いて相手の首を脇に抱え込み、そのままひねり投げた! 『でぇぇぇりゃあッ!』 「ピッギャ――ゴオオオウ!」 レッドキングの巨体が地面に激しく打ち据えられる! 『ピッギャ――ゴオオオウ!』 ミラーナイトの見ている前で、レッドキングがいきなり前転して大地に仰向けに倒れ込んだ。 当然、ミラーナイトは何もしていない。 『さ、さっきから何が起こってるんだ……?』 さっぱり理解が出来ないミラーナイト。彼の視点からだと、一人相撲をしていたレッドキングが 自分から地面に投げ出されたようにしか見えないのだ。 「ピッギャ――ゴオオオウ!」 起き上がったレッドキングは尻尾を横に振り回して攻撃してきた。その一撃はまるでハンマーの殴打。 ゼロも受け止め切れずに殴り飛ばされた! 『うぐあッ!』 負けるな、ゼロ! レッドキングを倒せるのはお前だけなんだ! 『言われるまでもねぇさ! せぇぇいッ!』 立ち上がったゼロは再度飛んでくる尻尾を見事キャッチ。相手の勢いを逆に利用して、 ジャイアントスウィングを掛ける! 『おおおおおおおッ!』 「ピッギャ――ゴオオオウ!」 レッドキングの足が地面から離れ、宙に浮いて猛スピードで回転する! とうとうレッドキングは宙に浮き上がって高速回転を始めた。しかも回転軸はレッドキング 自身にはなく、虚空の一点を中心に大きく回っている。 これにミラーナイトは、レッドキングは自分の力で回転しているのではなく――そもそも レッドキングに浮遊能力はない――何かに振り回されているようだ、と感じた。 『こいつ……さっきから、見えない何かと戦っている、というのか……?』 つぶやくミラーナイト。普通ならちょっと考えにくいことであるが、先ほどからのレッドキングの 奇行はそうでもないと説明がつかないものであった。 レッドキングを地面に叩きつけたゼロは、いよいよとどめの必殺光線を発射する! 『これでフィニッシュだぁぁッ!』 腕をL字に組んで、ワイドゼロショット! 光線は綺麗にレッドキングに命中した。 「ピッギャ――ゴオオオウ!!」 この攻撃にレッドキングも耐えられず、一瞬にして大爆発を引き起こした。 『ピッギャ――ゴオオオウ!!』 最終的に、レッドキングはいきなり爆発を起こして消滅した。事態を一切呑み込めていない ミラーナイトは、レッドキングの再出現を警戒してしばらく周囲の様子を伺っていたが、それ以上 何事も起きる気配がないので、構えを解いた。 『……結局、何だったのだろうか……』 ミラーナイトはそんなひと言を漏らしていた。突然現れたレッドキングに対して何も出来ないかと 思いきや、レッドキングは奇行の果てに爆散した。この訳の分からない事態に、混乱するのも当然というもの。 ミラーナイトは思わず、今回の戦いとも呼べない戦いで感じたことをそのまま口にした。 『まるで、夢でも見ていたかのようだ……』 レッドキングを倒し、学校からの帰り道。俺はルイズと一緒に歩いていた。 「ルイズ、改めて優勝おめでとう。ホントにお前、よく頑張ったよ」 「あ、ありがとう……」 あの後ドタバタしたので直接言えていなかった称賛の言葉を伝えると、ルイズは控えめに お礼を言ってから、 「あ、あの、サイト? その、優勝のこと、だけど……」 「ん? どうした?」 「……わたしがキュルケに勝てたのは、サイト、あなたが色々手伝ってくれたからよ。あなたの アドバイスがなかったら、きっと無理だった……。だから、その……ほんとに感謝してるわ……。 ありがとうね……」 二度目のお礼。な、何かルイズ、急にしおらしくなることが最近多いよな……。そういう かわいいところを見せられると、ルイズのことを意識してしまって何だか気恥ずかしくなる……。 「あ、あの、ルイズ?」 「何よッ!」 「あ、ごめん。やっぱ、何でもない」 何か言おうかと思ったが、今回も変にルイズを意識して、結局言うことが思いつかなかった。 「じ、じゃあ、わたしの話を聞きなさい」 「何だ?」 ルイズの話? ミスコンが終わって、まだ何かあるのだろうか。 「わ、わたし、ミスコンのために水着、買ったわよね」 「あ、ああ。そうだよな」 「そ、それだけに着て終わりってもったいないでしょ? そう思うでしょ?」 「確かに。かわいい水着だったし、一度着たきりじゃもったいないよな」 そうだな、今年の夏は過ぎたけれど、また次の機会にでも泳ぎに行く時とかに着るのも いいだろうな。と思っていると……ルイズは言った。 「だ、だから……ここ、こ、今度、海に……つ、連れていきなさいよ!」 「海に?」 え? お、俺が、ルイズを……? 「そうよ! で、でで、でも、言ったでしょ!? これは水着がもったいないからって! だ、だから仕方なく、あんたと行ってあげるんだからッ!」 そ、そういうことか。でも……女の子から泳ぎに誘われるなんて、すごくドキドキするな……。 夏休みには、シエスタたちと遊びに行ったはずだが……。 「お、俺は別にいいけど。……じゃあ、いつ行こうか」 「そ、それはあんたが決めることでしょ!? ちゃんと計画立てて、それにせっかくだから、 た、楽しませてよね!」 「分かったよ。がんばってみます」 ルイズと泳ぎに行くプランか……。俺に上手に立案できるかな? 更にルイズは要求する。 「……じゃあ、とりあえず。この場は、わたしを家までエスコートしてちょうだい」 「はいはい。んじゃ、行きますか」 ぶっきらぼうに呼びかけたら、ルイズは怒鳴り声を出した。 「『行きますか』じゃないわ! エスコートなんだから、もっと優雅に!」 「優雅って……。お前、いつもそればっかだな」 やっぱり、育ちがいいとそういうの気にかかるもんなんだろうか。まるで貴族みたいだよな。 ……いや、ルイズが「優雅」って言うの、これが初めてだったじゃないか? 何だかよく 言われているような気がしたけど……。 「サイト?」 「あ、ああ、何でも。んで、優雅な誘い方って?」 「『レディ、こちらです。お手をどうぞ』。これくらい考えつかないの?」 おいおい、無茶言うなよ。俺は日本の一般庶民だぞ。ってルイズ相手に言っても、しょうがないか。 「はいはい。ではレディ、こちらです。お手をどうぞ」 「……ありがとう、ジェントルマン」 俺が差し出した手をルイズが取り、俺たちは再び歩き出す。いい歳して手をつないで歩くのは 恥ずかしかったが……ルイズが横にいると、何故だか周りの目はそれほど気にならなかった。 ……つい最近、似たようなことがあったような気がしたのも、その理由かもしれない。 家に帰ると、リシュが俺を出迎えてくれた。 「ただいま、リシュ」 「お帰り、お兄ちゃん! 今日がお兄ちゃんの学園のミスコンだったんだよね。楽しかった?」 と尋ねてくるリシュに、俺はぐっと親指を立てた。 「ああ、バッチシな! 当初の目的だった、ルイズとキュルケの仲も多少なりは改善できたみたいだし」 その本来の目的が達成できただけでも、苦労した甲斐があったというものだ。 「これからは、平穏な日常が送れるだろうな。久々に明日が来るのが楽しみな気分だぜ!」 ルイズといつか、泳ぎに行く約束もしたしな! またルイズやみんなと楽しい時間を過ごすんだ。 そう、明日から……! ……そう思っていたら、クス、といった音がした。 「そうだね……平穏な明日が来るよ……。これからは、もう何にも苛まれない……」 「……? リシュ、今何か言ったか?」 「ううん! 何も言ってないよー!」 ニコッと笑いかけたリシュは、クルリと背を向けてそのままパタパタと家の奥へ走っていった。 ……その姿はいつものようにあどけない、無邪気なもの、のはずなのだが……俺は何故か…… 妙に不安なものを感じた。どうしてなんだろうか……。 平穏な明日……明日は、来るよな。当たり前のことなんだが……。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
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前ページ次ページKNIGHT-ZERO 夜空を見上げるたび、奴の事を思い出せ ナイト ライダー それが奴の名前だ MADMAXより ルイズとシエスタが争い、時に共闘し、KITTを巡って騒動を繰り返していた日々を突然の政変が襲った ルイズの暮らすトリスティン王国、それを擁するハルケギニア大陸の上空を回遊する浮遊大陸アルビオン 最強の竜騎兵と巨大な飛行戦艦を擁する空の軍事国家が、トリスティン王国に宣戦布告をしたという 続々と入ってくる戦局の趨勢に学院の生徒や職員は無関心で、日々の授業はいつもと変わる事無く行われた 戦地の情報を王宮に報告する伝令騎兵の中継地となっているトリスティン学院に、あるニュースが入った アルビオン軍旗艦レキシントン号及び竜騎兵部隊、タルブ村に置いてトリスティン本土侵攻作戦開始 タルブ ここから早馬で丸二日ほどの場所にある風光明媚な農村、王都と隣国に等距離の位置にある要衝 この学院に住み込みで働いているシエスタの出身地、彼女の父母と弟妹達が暮らし、曽祖父が眠る故郷 ルイズとはKITTを巡るライバルであるシエスタ、その帰るべき地が戦乱に踏み荒らされつつあった ニュースを聞きながらも淡々とメイドの仕事を続け、気丈に振る舞うシエスタを見ていたルイズは その報せを聞いた日の深夜過ぎ、祈祷書をドアポケットに放り込み、KITTのエンジンを始動させた エンジン音をほぼ無音にするウィスパーモードで学院の敷地を出ようとするルイズとKITTは 門の前に立つシエスタの姿を認めた、私服のワンピースの上にマイケルの革ジャンを羽織っている 「・・・・・・ミス・ヴァリエール・・・お待ちしていました・・・・・・さ、助手席のドアを開けて頂けますか?」 ルイズがKITTと共にタルブに向かうと聞いたシエスタは、自分も一緒に戦いに行くと言い張った 「バカっ!これから私とKITTが行くのは戦場よ!メイドのあんたに出来ることなんて何もないのよ! あんたなんか嫌いよ、死んじゃえばいいと思ってるけど、死なせるわけにはいかないの・・・・・・絶対に・・・・・・」 KITTから出て、シエスタの両肩を掴み怒鳴るルイズの目を、シエスタは覚悟を宿した黒い瞳で見つめる 「もし本当に・・・死ぬような目に遭うんなら、なおさらミス・ヴァリエールを一人では行かせられません 私は自分の故郷とKITTさん、大切なものを全部無くして生きていけるような強い女じゃありません」 ルイズはシエスタの一途な瞳から目をそらした、月に照らされたKITTの黒い肌を指でそっと撫でる 「KITTは何があっても大丈夫よ、でもわたしは違う、だから・・・だからこそあなたは連れていけないの!」 ルイズがもう一度シエスタの瞳を見つめる、鳶色の瞳からは高慢さは消え、ただ彼女の想いと願いを映す 「もし・・・わたしが死・・・ダメになった時・・・あなたがKITTを……お願い・・・・・・あなたにしか頼めないの」 ルイズは決めていた、使い魔として一方的に召喚したKITTを、この世界で決して一人にはしないと シエスタはKITTのフロント・インジケーターを見て、それから長い間ルイズの瞳を見つめていたが いつも着ている黒い革ジャンを脱ぐとルイズにそっと手渡した、着古した革ジャンにルイズは目を落とす 「この季節・・・タルブはまだ寒いですから、特別に貸してあげます・・・勘違いしないでください・・・ ミス・ヴァリエールが必ず、KITTさんと、この学院まで帰って来て、その手で、私に返してください それが出来ないのはわたしへの・・・KITTさんへの裏切りですから・・・約束、していただけますね?」 ルイズは自分のマントを外し、マイケルの革ジャンを着込むと、メイジのマントをシエスタに投げつけた 「これ洗っときなさい!わたしはちょっと竜騎兵と戦艦落っことして夕食までには帰る予定なんだから あんたがそのナマイキな体でKITTをいやらしく洗う時みたいに、丁寧に洗って私に届けなさいよ!」 ルイズはリトラクタブル・ライトをポップアップさせると、ヘッドライトの白光と暗視装置で夜道を照らし グッドイヤーのタイヤで芝を蹴りたてながら学院を飛び出した、バックミラーを見ることは出来なかった ミラーに映る学院と掌を合わせ祈るシエスタを見てしまうと、自分の決心が鈍ってしまいそうだったから 「・・・・・・帰ったら・・・・・・あんたと一緒に、KITT洗ったげなきゃいけないんだから!」 KITTは緊急走行のパースート・モードで平原を飛ばし、馬で二日かかるタルブまで3時間で着いた 夜が明け、陽の光の下に晒された戦地、美しい風景を誇っていたタルブの村はひどい有様だった 村人の多くは森に逃れていたが、家々は焼き尽くされ、村の自慢である葡萄畑は無残に踏み荒らされていた 「ルイズ、戦線は草原地帯の東端に展開されています、どうやら状況は当方に不利なようです」 ルイズはタイプライター式にキーの並んだKITTのセンターコンソールをブラインドタッチで操作した メインモニターにイージス艦のCICに似た三次元図が表示され、地形と移動物の位置をルイズに教える それらの装置とこれから必要になるであろう装備の操法はここに来るまでに速成でKITTに教えられた 攻めるアルビオン勢と守るトリスティン兵士はほぼ同数、しかし戦艦の支援を受けた50騎の竜騎兵の 波状攻撃により、トリスティンの少数の火竜は地上に釘付けにされ、騎兵はその数を減らしつつあった モニターに赤く表示される小さな三角形、ルイズはズームカメラを起動させ、モニター画像を切り替えた 肉眼の356倍に拡大しモニターに表示されたデジタル画像の中に、ルイズは見紛うはずもない姿を認めた 白いユニコーン、短く切ったドレス、水晶の杖で臆すことなく劣勢の自軍を指揮するトリスティンの王女 アンリエッタ姫の姿がそこにあった、ルイズはこの凛とした風格を持ち、しかし誰よりも繊細な姫が 戦場で危険に身を晒している様に胸を千切られるような気持ちになった、敬愛する王女、幼馴染のアン この戦場で、一人のメイジと一台の移動機械に一体何が出来るというのだろうか、ルイズは考えた 貴族の名の元に参戦する戦、使い魔のKITTじゃなく、このわたしが判断し実行しなきゃいけない 「ねぇKITT、あんたの分子結合殻はこの世界のあらゆる物にも破壊不可能なんだったわよね」 「ええ、火竜の火炎放射も、魔法と称される自然現象兵器も、私の前には無力です、しかし・・・」 「それなら・・・方法はあるわ!」 ルイズは身を隠していた森の縁から急発進し、トリスティン王国軍の屯す陣地にKITTを突っ込ませた 「KITT、あんたがするべき事はわかってるわね?、遠慮はいらないから思いっきりイっちゃいなさい」 KITTはルイズの求めに応じステッペンウルフの「Born To Be WILD」を大音響で流した アンリエッタの乗るユニコーンまで真っ直ぐKITTを走らせる、目視で確認出来る距離まで近づいた 途端にトリスティンの騎兵隊が動き出し、アンリエッタ姫を守るようにKITTの前に立ちふさがる 精強と聞くマンティコア騎兵隊が展開するのを見て、そりゃそうだ、と思いながらルイズは頭を掻いた 自分達の姫様に向かって奇怪な黒い物体が突っ込んでくれば、普通は敵方の魔法か何かだと思う ルイズはジョン・ケイのギターにリズムを合わせるようにKITTを前後左右に動かながら騎兵陣を見渡す 「ルイズ、まずは斥候兵と接触して、書面か伝令で本部に着任をお伝えしたほうがよろしいのでは」 「悪いけどそんな時間は無いのよ、姫様にはちょっぴり『ろっくんろーる』な方法で挨拶しましょうか」 ルイズはKITTの進路を左に振る、統率の取れた騎兵隊が即座に左に集り、厳重な防御陣を敷く 今度は右に振ってみた、向こうもこちらから見て右側に騎兵を集中させ、銃を持った歩兵も同調する 厄介なのは軍勢が左に集中した時には右に数騎残り、右に集中した時には左に残る騎兵だった 防備の主力が他所に偏っても絶えず持ち場を守り、自分の側が重点になった時は騎兵が集まる中核となる 同様の警備は全方位に敷かれているらしく、士気の高いトリスティン兵士達の堅固な守りには穴が無い ルイズは目視とKITTのレーダー画像を見比べて少し考え、その防備の中央にKITTを突っ込ませた 火竜の炎と騎兵の魔法攻撃が届きそうになる距離までKITTを近づけた、騎兵の顔がはっきり見える 一応、姫の女官として知られてたこっちの顔も見えたんだろうが、怪しい乗り物への警戒は解かれない まともに兵士と接近していたら今ごろ疑われ殺されていただろうと思いながら、操縦桿を素早く切った ルイズはアクセルを全開にしながら前輪の駆動をカットし、ほぼ一回転のスピンターンをした、爆音が響く 普段ルイズが好む、アクセルの微妙な操作で草原上をスケートのように四輪で滑り抜けるドリフトではなく KITTの後輪のトルクを思い切り地面に叩きつけるパワーターン、大量の草と土と小石が跳ね上げられる 機能のひとつであるテールからの煙幕も作動させ、KITTの姿を一瞬の間、兵士達から隠したルイズは 前方を見ずモニターの赤外線画像だけを見ながら、盲となった防備陣の隙間にKITTを突っ込ませた 騎兵達の間を斜めに滑りながら通過したKITTは、そのままアンリエッタまで一直線に駆け抜けた 姫の乗るユニコーンを直近で守るグリフォン近衛隊の最終防衛線の頭上をターボジャンプで飛び越える 「ルイズ、私は故郷のデトロイト・ライオンズに、あなたをクォーターバックとしてお招きしたい」 アンリエッタ姫の目前で着地したKITTをスピンさせてスピードを殺した、軽い草が少し舞い上がる ルイズは立ち上がり、足で操縦桿を回しながらTバールーフを開いて上半身を出すと、手を振って叫んだ 「ルイズ・フランソワーズ・ラ・ヴァリエール、使い魔のKITTと共に、ただ今馳せ参じました!」 ……Born To Be Wild…… ……Born To Be Wild…… 前ページ次ページKNIGHT-ZERO
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「大決戦! ジョセフVSみんな」 舞台はクライマックスを迎えようとしていた。 戦艦シャルル・オレルアン ルイズとキャプテンはガリア王ジョセフと対峙していた。 「ははっ!ガンダールブ、例え私を倒しても、お前ではこの檻を壊す事は出来ないよ!」 ミョズニルトンを倒したが、最後に捨て身で切り札のルイズを閉じ込めてしまった。 戦艦には二人が対峙していた。 「お前は必ず私が倒す!」 ジョセフを前にして、既にボロボロになりながらも、その瞳には闘志を失っていなかった。 「おのれ、ガンダムめ!」 それまで、自分が抱いた事のない怒りをジョセフは浮かべる。 お互い既に満身創痍、ジョセフも魔法を放つ精神力など無かった。 キャプテンに憎悪を込めた拳を打ちつける。 人間の物とは思えないほどの威力がキャプテンを襲う。 しかし、踏み止まりキャプテンはジョセフの顔に拳を叩きつける。 それから、お互いキャッチボールの様な殴り合いが続く。 (ばかな、ありえん……何故コイツは立っていられる) ジョセフは久方ぶりに理解できないと言う感情にとらわれていた。 自分が爆発させた火石の直撃を受けた筈のキャプテンは、未だに立ったままで居る。 それどころか、キャプテンの拳をかわす事が出来ずにいた。 (俺が苛立っている? このゴーレムもどきに?) 自分は世界を後ろから操る王の筈であった。しかし、今、目の前のゴーレムもどきと殴り合いをする自分は何と滑稽であろう。 泣きたい、その思いが今日までのジョセフの生きる目的であった。 そして、今それを達成され筈である。 だが、未だに自分はこのゴーレムと殴り合いをしている。 ジョセフは右拳を突き出す。 キャプテンはしゃがんで潜り込み、回転した勢いのついたカウンターを放つ。 身を捻ってかわそうとするが、完全とは言えず右腕に直撃する。 激しいたん身が、右腕が使えない事を伝える。 「痛ぇんだよ!」 睨みつけ、殴りたいと思う一心でジョセフの拳がキャプテンの右腕に当たる。 もともと、火石の直撃を受けた右腕はジョセフの腕力でも楽に弾き飛ばす。 (こいつは本当なら、この様になっている筈だ) ダメージを与える事に、内心で安堵する。 そして、お互いが出した拳が、直接ぶつかりあう。 どちらが優位ともいえず、お互いにはじかれ距離が出来る。 「キャプテン!」 ルイズの叫びが、キャプテンの耳に届く。 (なんでそんなに無茶するの! アンタを直す技術なんか、この世界には無いのよ!) ルイズには目の前の出来事が理解できなかった。 人間の怪我は、程度はあれハルケギニアでも治療は出来る。 しかし、キャプテンの体を修理する事はコルベールをもってしても不可能であった。 自分の無力さを呪う。既に“爆発”を唱えてしまった為“解呪”も使う事は出来なかった。 ジョセフが火石を爆発する際、キャプテンは自分を盾にして、自分の腕で爆発を抑え込んだ。 キャプテンのソウルドライブの力もあるが、それでも、致命傷を負うのは必然であった。 (なんでそこまでするのよ) ジョセフはもう魔法を使えない。シェフィールドを倒した今、他の騎士でもジョセフを捕まえる事は出来る。 なのにキャプテンは、そんな素振りを見せず。ジョセフと殴り合いを続けている。 「もうよい、貴様如きに使いたくは無かったが見せてやろう!」 その言葉と共に、ジョセフの前に鎧が現れる。 「ヨルムンガルドの技術を応用して作った俺専用の鎧、完全悪大将軍だ!」 船の甲板が割れ中から、黒い鎧の様なものがジョセフと封じられたルイズを包む。 それは、5メイル程の機械人形であった。 (まだ、こんな切り札があった何で……) 虚無の魔法が使えない、と思っていただけに。ルイズの落胆は激しいものがあった。 ジョセフはそれに乗ったまま、キャプテンに殴りかかる。 生身のジョセフの攻撃すら当たったキャプテンには避ける事は出来ない。 急に目の前に現れたような錯覚を受け、キャプテンは衝撃で壁に叩きつけられる。 「キャプテン! この世界の人間でもないアンタが何で戦うの!? あなただって無事じゃないの!」 ルイズには、キャプテンを視界に入れるのも辛い。しかし、キャプテンは立ち上がる。 「奴は君やタバサを傷付けた!」 キャプテンが答える それを見て、ルイズは驚く。 初めて会った時、キャプテンはガーゴイルその物であった。 思考はあっても感情が無い。 キャプテンの冷静な判断は何時もルイズを苛立たせた。 喧嘩をしたのは何度あったか分からない。 そのキャプテンが怒っている。自分を傷付けたと言う理由で。 「ルイズ、私は君に感謝している。君は私を信じて、いつもいつも応援してくれた。 そして、私に感情……笑うと言う事、嬉しいと言う事を教えてくれた」 壊れたフェイスガードから、キャプテンの口がのぞく。 初めて見た時、ルイズは変だと思った。 笑う練習で笑った時、むしろ怖いと思った。 キャプテンは笑っていた。 それは、とても自然な笑いであった。 「ルイズ、君は私達が必ず守る。ジョセフを倒し、未来を守る。人間もエルフもすべての生命を守る!」 「キャプテン……」 ルイズはそれしか言葉が出無かった。 「ルイズ、頑張れ……一緒に行くぞ!」 その時、キャプテンの胸部から光が溢れ出す。 何度も見たソウルドライブの光 キャプテンは自分の応援に信じた時、いつも答えてくれた。 フーケと戦った時、ワルドに襲われた時、アルビオンでソウルドライブを奪われ取り返した時。 そして、今初めて自分を応援してくれる。 「輝け……輝いてくれ……」 「自分を信じたまえ、キャプテン!」 下らないいざこざから、いつの間にか親友と呼べる間柄になったギーシュがキャプテンにエールを送る。 「キャプテン、ルイズを連れて帰りなさい! タバサの勇者でしょ!」 何だかんだと言って、いつも一緒に居たキュルケが船を見上げる。 「キャプテン、頑張って!」 「頑張るのね、きゅい!」 シルフィードに乗ったタバサがキャプテンを見つめる。 死を覚悟した自分の前に現れ、エルフ相手に一歩も引かなかったキャプテン。 共にいる中で、人形だった自分よりも、人間らしくなっていくキャプテン。 (あなたは、やっぱり私の勇者) 「輝け……輝け……輝け! ソウルドライブ!」 キャプテンの瞳に炎が燈る。 そして、黄金の光が溢れ出す。 「やればできるじゃない……」 キュルケが、何度も見て来た光景を見て安心した声をあげる。 キャプテンを黄金色の光が包む。 「がんばれ、キャプテン」 「頑張りなさい、キャプテンくん」 「頑張ってください、キャプテンさん」 「頑張れ、キャプテン」 マリコルヌ達が、コルベールが、アンリエッタ達やアニエス達がエールを送る。 キャプテンはジョセフ……いや、完全悪大将軍を見る。そして…… 「行くぞ! ルイズ!」 「馬鹿め、ヨルムンガルド以上の反射を備えた完全悪大将軍に、お前の攻撃など通用するか!」 (キャプテン……そうね……私達は……負けない!) ルイズは杖を握った。 今も自分を救うべく戦っているキャプテンの為に 信じると言ってくれたキャプテンの為に 「私達は負けない……アンタ、何かに……絶対に負けない!」 ルイズは唱える。 ウル・スリサ-ズ・アンスール・ケン……。 (キャプテンは私に頑張れって、言ってくれた) その言葉しか言えなかった自分。 ギョーフー・ニィド・ナウシズ…… (これで、2回目ね) 魔法に失敗していた時、彼は落ち込んだ時はこう言うといい。と言って、その言葉を言ってくれた。 エイワズ・ヤラ…… (使い魔なんだから、ご主人様の事もっと応援しなさいよ! ……だから……アンタにはもっと応援してもらうんだから……) これからも、一緒に。 (頑張れ、キャプテン) ユル・エオー・イース! ルイズは杖を振り降ろした。 ルイズには“爆発”を撃つ事は出来なかった。 (けど、反射は消す事が出来る……後は頼んだわ、キャプテン!) 「なっ、何!」 ルイズが魔法をつけないと思っていただけに、ジョセフは驚く。 その一瞬を後悔した。 そこには、キャプテンが目の前に居る。 「お前に何が分かる。俺の心の闇の何が分かるというのだ?」 「誰も理解しようとしないお前に、誰が理解してくれると言うのだ! ……それに、理解してほしいのなら、やる事が違うだろ!」 キャプテンの拳が、ジョセフの待とう鎧の中心核を打ち抜く。 ルイズは闇の中に居た。 キャプテンが手を伸ばしてくる。 ルイズは拳を握る。一瞬、キャプテンが自分の手を握ってくれる気がした。 ルイズは拳を出す。 何かを叩き割る感触が、ルイズの拳に伝わる。 ガラスの破片の様に、ルイズの居た空間が割れ、ルイズの瞳に光が差し込む。 そして、ルイズは見た。 光の中、自分に腕を差し出してくれる自分の使い魔を。
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back / next 零話 『蛇は林檎を投げ落とす』 「この宇宙の何処かにいる(ry」 お決まりの召喚呪文とお決まりの爆発。 “魔法が一切使えない魔法使い”のゼロとさげずまれている『ゼロのルイズ』ことルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが顔をすすだらけにしながら唱えたその呪文は、ミスタ・コルベールに与えられた最後のチャンスだった。 どうせ何もねーだろと生徒たちが飽き始めているなか、爆発で怒った煙がゆっくりと晴れていく。 煙の中には、唐草模様の書かれた毒物にしか見えない大きな実が、一つだけ転がっていた。 「さすがゼロのルイズ!」 「珍しいのは確かだな!」 ルイズは涙をこらえるのに必死だった。 ドラゴンやグリフォンのような幻獣とまで行かなくても犬やネコでも良かった。それこそ蛙や蛇でも。 しかし彼女に引き当てられたのは虫ですらなく、動くことのない植物だった。 コルベールに急かされその実にコントラクト・サーヴァントを行う。 ルーンの発生を確認して、コルベールは全員を下がらせた。 唐草模様に邪魔をされたのと対象が木の実だったこともあり、コルベールはそのルーンを深く調べはしなかった。 ただ一人とぼとぼと、ルイズは実を抱えて自室に戻った。 その日ルイズは初めて授業をサボった。 夜、ルイズはふと目を覚ました。 泣きつかれたまま眠った涙の跡の残る顔で、ルイズは眼前の木の実をにらみつけた。 ふつふつと怒りがこみ上げ、それをぶつけるようにルイズは実にかぶりついた。 毒かも知れない、という思考がないわけではなかった。 それでもルイズは実をかじった。死ぬ可能性を理解しながらもそれにかぶりつく。 死んだほうが楽かもしれない、とさげずまれ続けた17年を振り返り、涙を流しながら実をほおばった。まずい。 2/3ほどを食らったところで残りを床に放り投げ、また泣きながら眠った。 ルイズの額にぼんやりとルーンが浮かび上がる。 それは虚無の使い魔の証。 実に刻まれ、食らうことでルイズに移された刻印。 それは神の頭脳。 それは神の本。 その名を『ミョズニトニルン』 その実の名は『悪魔の実』 back / next
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ゼロのルイズが魔法を失敗し、爆発を起こす。当たり前の光景であり、そこには毛の先ほどの意外性もない。 はずだった。 『春の使い魔召喚の儀式』でサモン・サーヴァントを唱え、使い魔を呼び出す。 メイジであれば誰もが通る道だが、例外がないわけではない。例えばここにいるルイズ。 魔法を行使しようとしてもその成功率ゼロパーセント、ゆえにゼロのルイズ。 フライ、ロック、レビテーション、コモンやルーンの違いに関わらず、全ての呪文が爆発に通じる。 心無いクラスメイト達の期待にたがわず、大事な儀式でも爆発を起こす。 向かう先は留年、退学、兎にも角にも不名誉な道だが、嘲笑う人間にとってはどうでもいいことだ。 ただここに笑うネタがある。それで十分、十二分。 「おいおい、使い魔くらいまともに召喚してくれよ!」 「さすがはゼロのルイズだな」 「あなたには使い魔無しがお似合いよ!」 ここでルイズからの苦しい反論があり、それをネタにもう一笑い、という流れに沿うはずだった。 だが、当のルイズが動かない。爆発により巻き起こった土ぼこりを呆然と見つめていた。 自然、からかうことに腐心していたクラスメイトもそちらを見る。 笑いもからかいも無く黙って眺めていた級友達、慰める準備をしていたコルベールもそちらを見た。 土ぼこりの向こうに茫としたシルエットが見える。 はっきりとはしないが、二本の足で立っているようだ。 「亜人……?」 「まさか人間……?」 一人ならぬ人間が息を呑んだ。一陣の旋風が土ぼこりを払う。 皆のマントがバタバタとあおられ、女生徒のスカートがはためくも、目を逸らす者は一人としていない。 ルイズの爆発によって起こされた土ぼこりが吹き飛ばされた先には――何もいなかった。 一転、爆笑。 「やっぱりゼロはゼロだな!」 「まったく驚かせないでよね。紛らわしい」 ルイズの双眸は驚愕に見開かれていた。普段は澄んだ桃色を湛えているその瞳は、掴みかけた成功を奪い取られた絶望の黒に塗り固められていた。 「違うのよ! たしかに召喚した! 手ごたえがあったのよ!」 転々、爆笑。 「だっていたじゃない! みんな見たでしょ! そこに人影が!」 「光の加減でおかしなものが見えたんだろ」 「見間違いにすがるのはやめとけよ」 「いや、たしかに召喚は成功していたようだ」 土ぼこりの跡を調べていたコルベールの一言に、場の空気が再度固まった。 「見たまえ、かすかではあるが足跡が残っている。これはミス・ヴァリエールが起こした爆発の後にできたものだ」 「それじゃミスタ・コルベール……わたしはサモンに成功していたんですか!?」 「そういうことになる」 絶望は喜びへと転化しようとしたが、ルイズの理性が急転直下を押しとどめた。絶望は喜びではなく疑念に変わった。 召喚に成功したというのなら、なぜ使い魔がいない? まわりの生徒達もざわめいている。 使い魔に逃げられたとなれば格好の笑いの種だが、問題はその逃げ方だ。 衆人環視の中、忽然と消え失せた。そんなことが可能で、あのシルエットの持ち主となると―― 「音も無く消えるっておい……」 「エルフ……?」 「いや吸血鬼ってことも……」 「本当かよ……あのルイズが……」 思い当たる存在を次々あげていくだけで、ささやかならぬ恐怖が蓄積されていく。 不安げに囁きあう生徒達の心配が杞憂に終わらないであろうことを次なる発言者が念押しした。 「逃げていない」 「……そうか。君は風のトライアングルだったね、ミス・タバサ」 眼鏡をかけた少女がドラゴンの頭を撫でていた。 次々変わる状況におびえているのか、使い魔のドラゴンが少女について離れない。 「風が動いていない」 タバサの耳元でドラゴンが口を動かしているその様は、タバサという通訳を介してドラゴンの考えを語っているかのような滑稽さがあったが、それを笑う余裕がある者はこの場にいない。 「召喚された者が未だここに留まっているというのかね?」 「そう」 動揺は揺れ返し、恐慌になろうとしていた。 「なんだよ! どういうことだよ!」 「ど、どこに隠れてるんだ!?」 「落ち着きたまえ! 皆、見ない顔はいないか周囲を確認しなさい」 キュルケは杖を構えルイズの傍らへと移動した。さりげなくマリコルヌがついていく。強い者の周りが安全――風上との判断か。 ギーシュは右手にモンモランシーを、左手にケティを抱え、落ち着かない様子で周囲を見回す。 コルベールは油断無く生徒の顔を確認した。次いで召喚されたばかりの使い魔達を見る。 ――おかしい。 見知った顔しかない。教師の務めとして、召喚されたばかりの使い魔もきちんと把握している。 この場にいないはずの存在、いてはならない存在がない。 「ちょっとルイズ! あなたが召喚した使い魔でしょ、責任とりなさい!」 小声だが強い調子で話しかけた。キュルケの声が聞こえないはずはないのだが、ルイズは動かない。 「ルイズ?」 キュルケの語調が弱くなり、語尾に疑問符がついた。 いつでも魔法を使えるよう、杖を構えたままでルイズの顔を覗き見る。 そこにあったものは……。 「ル、ルイズ……!?」 高いプライドを持ち負けず嫌い、そのせいでコンプレックスに潰されかかっている。 何かとつっかかってくるが、その方向性はいまいちずれている。 空気は読めないが、他人のことを思いやることもできる。ただし余裕がある場合に限り。 キュルケにとってのルイズは、危なっかしく目が離せない妹――ルイズに聞こうとキュルケ本人に聞こうと言下に否定されるだろうが――のような存在だった。 だが、そこにはキュルケが見たことのないルイズがいた。 異相? 異様? 違う。これは……異形。 呆けているのではない。確固たる意思を持って半ば開かれ、半ば閉じられた口。 怒りとも笑いともとれない角度で押さえつけられている柳眉。 そしてその眼。平生の桃色でも絶望の黒でもない。そこには何も無い。『何も無い』があった。ただあった。 眼球が零れ落ちる寸前まで瞼が押し広げられ、瞬き一つ無く……。 キュルケは意識することなく一歩退いた。一歩退き、その事に気づいて戦慄した。 使い魔がこの場から離れていないとすれば、召喚主であるルイズが誰よりも危険に晒されているということになる。 ま、たまには恩を売ってやってもいいかもね……その程度の軽い気持ちでルイズの傍らに寄った。 庇護すべき対象だったはずのルイズに恐怖した。その事実がキュルケを戦慄させる。 この子は……この子は何だ? 何を見ている? 分からない。分からないことがたまらなく恐ろしい。 「おびえる必要はないよ」 キュルケの肩に手が置かれた。 「ルイズちゃんは集中しているだけなんだ」 「集中……?」 キュルケが振り返った先には女性用の下着をかぶった熊がいた。 「ここで使い魔をゲットしなくちゃ破滅が待ってる……追い詰められたルイズちゃんのインスピレーションがいつもの何倍も働いているんだ」 二本足で立つ熊が訥々と、だが自信ありげに語る。 「あの悪い目つきはその印だよ。あの鋭い目から逃げられる犯人は一人もいないんだ」 キュルケがふっと息をはいた。タバサとシルフィードは黙して動かない。 ギーシュ達三人は震えている。マリコルヌは汗を拭った。コルベールは息を殺している。 「さあ始まるぞ。ルイズちゃんの名推理が……!」 <読者への挑戦状> さあ、材料は全て揃った。 あなたは事の真相を見抜くことができるかな?
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ソファーに寝ていたフーケは外に何者かの気配を感じて跳ね起きた。 (ちっ!追っ手か!) 「シャドー、おいで!」 シャドーを連れて床下の隠し通路に飛び込む。 その直後バン! と大きな音がして入口のドアが開き、一斉に杖が室内に向けられた。 「誰もいないじゃない!」 「ルイズ!棚の上に『異界の書』があったわ!」 「このソファー…、まだ温かい。奴はまだ近くにいる」 「本当?タバサ?」 「早く出た方がいい、まとまってちゃ危険」 フーケは既に外に脱出し、緊張した様子で小屋の様子を伺っていた。 が、小屋から出て来た生徒達の姿を見てため息をついた。 (またガキか、あたしは本当にガキに縁があるんだね) 呪文を唱えた。周りの土が集まり、初め大きな山が現れた、それが人の形を作っていく。 「あそこ!なにかいるわ!」 五月蝿いピンク髪に見つかったようだがもう遅い。ゴーレムは完成した。 同時に火と風の魔法が飛んでくる。なかなかの腕だが、フーケ自慢のゴーレムの守備力と回復力には及ばない。 フーケはあっという間に子供達を追い詰めた。 ルイズは焦っていた。 まさかここまで手も足もでないとは。ゴーレムの硬い防御によってキュルケもタバサも攻めあぐねている。 「ファイアーボール!」 ルイズは自分に向かってくる巨大な腕に向かって呪文を唱えた。 ゴーレムの手首の部分が炸裂し、半分程度の太さになった。だが腕の勢いは止まらない。 薙ぎ払われる! そう思ったその時、ジークが弾丸のように跳び上がり、細くなった手首の部分を貫いた。 「ジーク!愛してるわ!」 ルイズは思わず口走った。 「へぇー、あんたもオーガノイド持ってるんだ。ジークっていうのかい」 土くれの声がした。 こいつ!余裕こきやがって! 「もう一度よ!ジーク!」 ジークが跳び上がる。白い弾丸となってゴーレムに向かってゆく。 「させるか!シャドォーー!」 土くれが叫ぶと、どこからか黒い光が飛んで来てジークを叩き落とした。 「キュアアー!」 悲鳴をあげて地に叩き付けられるジーク。 「ジーク!大丈夫!?」 ルイズが慌てて駆け寄る。 「ルイズ!一端森に隠れて体制を立て直すわよ!」 キュルケの声だ。逃げるのは嫌だが仕方ない。 ルイズはジークを連れて森の奥へ逃げ込んだ。 ルイズとジークは木の影に潜み、様子を伺っていた。他の二人とははぐれてしまった。 どうやらジークに怪我は無いようだった。そこだけはほっとした。 巨大なゴーレムがルイズの近くを歩いている。彼女を捜しているのだ。 このままでは見つかる! 自分は結局ゼロなのか…、何もできないのか… ルイズは俯いた。 そんなルイズにジークが鼻を擦り寄せる。 「ジーク……」 そうよ!私が死んだら誰がジークの面倒みるのよ!こんなにかわいいジークを一人ぼっちにはできない! ルイズは前を見据えた。 「何だってやってやるわ!ジークを守るためなら!」 その時、ルイズの左手のルーンが輝いた。 誰かが呼んでいる… そんな気がした。 呼ばれる方へ向かって走り出した。 しかしその時、 「そこにいたか!」 土くれに見つかった! 巨大な拳が飛んでくる。まずい! 身を強張らせるルイズ。 しかし彼女に野蛮な拳が届く事はなかった。炎と氷がルイズを護ったのだ。 「ルイズ!大丈夫!?」 今日ほどキュルケとタバサを頼もしいと思ったことはない。 「少しだけ時間を稼いで!」 そう叫ぶと再び駆け出した。 「え!?ちょ、どこ行くのよルイズ!」 狼狽したキュルケの声はもはやルイズには届かなかった。 ルイズがたどり着いたのは見たこともない遺跡だった。彼女を呼ぶ何かに従って更に奥へと進む。 そこにあったのは巨大な獣の石像だった。虎に似ている。左手のルーンが更に強く輝いた。 「あなたが私を呼んだの?なぜ?」 石像の前足にそっと触れた。 「私に力を貸してくれるの?」 ルーンが痛いほどに光を増す。 「でもどうやって?あなたは動けないじゃない!」 こうしている間にも仲間達は危険に晒されているのだ。ぼーっとしてる暇はない。焦り始めたその時。 「キュアア!」 ジークが跳び上がり、石像に体当たりした。 「ジーク!?」 いや、体当たりではなかった。消えたのだ。ぶつかる寸前で消えた…。 一瞬混乱したがルイズにはわかっていた。石像の中へ入ったのだ。 石像がまばゆい光を発した。眩しい。思わず眼をつぶる。 光が止み、ルイズが眼を開けた時、彼女の前にいたのは石像ではなく。美しい青い装甲のライオンだった。 その威容にルイズはため息を漏らす。何と美しく、誇り高い姿だろう! ライオンはルイズの前に頭を垂れると額のオレンジの部分を開いた。 ルイズはそこに飛び乗り、中の椅子に座った。眼を閉じ、興奮した心を落ち着かせる。恐怖はなかった。 ルーンの輝きが最高潮に達した。 「あなたの名前は…シールドライガーっていうのね。私はルイズ・フランソワーズ、よろしくね」 ヴゥーン… コクピットがルイズに答えるように軽く輝いた。 「きっとこのルーンのおかげだわ、あなたの動かし方が手にとるようにわかる。さあ!行くわよ!ジーク!ライガー!」 シールドライガーが咆哮し、風のように駆け出した。 「くっ!こんなのどうすればいいのよ!」 キュルケが叫ぶ。 もう二人の魔力は確実に終わりに近づいていた。 キュルケは既にライター程度の火しかだせないし、タバサも扇風機といい勝負だ。 「ルイズは何やってんのよぉ!」 「ピンクはびびって逃げたのさ。さぁ、そろそろおねむの時間だよ!」 キュルケに無情な拳が振り下ろされる。 思わず眼を閉じるキュルケ。 しかし、彼女に拳が当たることはなかった。 キュルケが恐る恐る眼を開けると、眼の前には輝くシールドを纏った青い獅子がゴーレムの拳を真っ向から受け止めていた。 そして拳を跳ね返す。 なんて力だ! キュルケは舌を巻いた。 「キュルケ、タバサ!大丈夫!?」 二人は驚いた。何せ巨大な獣には、二人のよく知っているルイズが乗っていたのだから。 「る、ルイズ!?」 「話は後よ!今は土くれを倒さなきゃ!」 「く!なんだいそりゃ!?」 フーケは動揺を隠せない。 ゴーレムは再び拳を振り下ろした。 「たぁぁー!」 ルイズの咆哮と共にライガーは拳をかわし、ゴーレムの懐に飛び込む。 「ストライククロー!」 ライガーの爪が輝き、ゴーレムの胸元を深く切り裂いた。 「このガキィー!」 怒ったフーケはゴーレムの腕を振るい、ライガーを薙ぎ払おうとするが、輝く爪によって真っ二つにされてしまった。 速過ぎる。ゴーレムのスピードでは捕らえることなど出来そうにない。みるみるうちに傷が増えていく。これでは回復も間に合わない。 「とどめよ!」 ライガーのコクピットのハッチが開き、ルイズが顔を出す。 「ファイアーボール!」 ルイズが呪文を唱えると一瞬の間を置いてゴーレムの胴体が砕け散った。 傷だらけのゴーレムにこのダメージを癒す力はもうなかった。音を立てて崩れてゆく。 フーケは悔しがったがもうどうすることも出来ない。 「仕方ない、撤退するよ!シャドー!」 土くれのフーケはシャドーとに捕まって跳びたち、逃走した。 第三話「ZOIDS」に続く
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盛大な爆発音と土煙が舞い上がる…… (なんか手ごたえある!!) この日、数十回目の失敗の後。召喚に成功した事を確信したルイズは、拳を握り締めちょっと感動するのだった。 「おい、なんか居ないか?」 「まさかゼロのルイズが成功したのかよ!」 ざわめく生徒達を他所にルイズは期待に胸を膨らませながら(精神的な意味で)土煙を凝視するのだった。 しかしながら、土煙が晴れてくるのと裏腹に表情は徐々に曇るのだった。その理由は、「そこに立っていた人物が奇妙」だったからであった。 まず目に付いたのは、ルイズの背丈ほどはあろうかという大きなお面。 緑を基調としたカラフルでなおかつエキゾチックな人の顔を模したようなお面だった。そのお面をつけている人物の服装はと言えば…… 腰巻のようなものをしているが殆ど裸、しかもその体には何かの模様を刻んでいるのか塗っているのか…… どこからどうみても平民と言うより本で読んだ未開の地に住むと言われる原住民の様ないでたちであった。 (なんで私だけドラゴンやサラマンダーとかバグベアーとか……せめてフクロウとか猫とかじゃないのよ!! 平民ならまだしもどうみても原住民だし…… 正直言葉通じるのかしら?) ルイズは色々な事を考えると頭を抱えてその場にしゃがみ込んでしまった。 ここで普段の生徒達ならルイズをはやし立てるのだが、あまりの出来事にちょっと引いていた。 (なんか… やばくね?) (変な踊りしてるし…) (それより、すごく気になるんだが…… あいつの周りにいる白いの…… まさか…) コルベールは背中にかいている汗が止まらなかった。なぜならば、自分の経験と知識から照らし合わせれば間違いなくあの白いのは『精霊』であった。 精霊を従えているとなれば先住魔法の使い手の可能性が極めて高かったからであった。 コルベールは小声で生徒達に学院に戻るように指示すると静かにルイズに近づくのだった。 「ミス・ヴァリエール、静かにこちらに来なさい」 小声で呼びかけるコルベールの下へ静かにルイズが向かうと覚悟を決めた表情をした先生からこう言われるのであった。 「ミス・ヴァリエール、私が奴に話しかけたらすぐに学園へ走りなさい」 コルベールの表情と台詞の意味に気がついたルイズは首を振り涙目になりながら訴えるのだった。 「コルベール先生、でもあいつは私が召喚したんです。原住民みたいだけどそれでもやっと呼び出せたんです」 せっかく召喚できた使い魔を殺されると考えたルイズ必死に止めようとするのだった。しかし、コルベールが声に気をつけながらルイズを説き伏せるのだった。 「ミス・ヴァリエール、なるだけなら私もあなたのサモン・サーヴァントが成功したことを祝いたかったのですが… 奴は危険すぎます」 なおも食い下がろうとするルイズに対し、コルベールは奴の周りの白い奴を指差し精霊である事をルイズに告げるのだった。 魔法はからっきしであるが為、他の生徒の誰よりも知識に関して秀でていたルイズはそれを聞いた瞬間に真っ青になり震えながらその場に座り込んでしまうのだった。 (しまった、ヴァリエールが近くに居てはうかつに攻撃することも出来ん) コルベールは自分の配慮の浅さを呪うのだった。刺し違えても倒すつもりであったが、ルイズがちかくに居ては戦いの巻き添えにしてしまう可能性が大きかった。 ここで、コルベールはさらなるミスを犯していたのだった。それはルイズの行動を見て我が身を呪ってしまった事であった。 そのわずかな時間に奴が接近することを許してしまったのだった。コルベールが気付いた時にはすでに自分とルイズの間に奴は立っていた。 焦るコルベールを他所に奴はルイズの前で屈むと、不思議そうに首をかしげながらルイズをお面越しに覗き込んでいるのだった。 そんな奴に対して、ルイズは震えながらも貴族としてのプライドだけで気丈に問いかけるのだった。 「ああ、あんた誰よ!!」 奴はルイズの問いかけを聞くとスッと立ち上がり両手を挙げてこう答えるのだった。 「マッドマン!!」 マッドマンと名乗った奴は「ウホ!ウホ!」と叫びながらルイズの前で左右にぴょこぴょこと跳ねながら踊っているのだった。 しかし、突然叫んだかと思うと前のめりに倒れるのだった。 「危なかった…」 倒れたマッドマンの後ろから汗だくになった額をハンカチで拭いているコルベールが姿を現すのだった。 コルベールが踊っているマッドマンにそっと近づき後頭部へ当身をしたのだった。 「助かった…」 突然の出来事に身体を強張らせていたルイズだったがコルベールの機転のおかげだとわかると気が抜けてそのまま後ろに倒れそうになるのだった。 そんなルイズをコルベールは支えてコントラクト・サーヴァントを早く済ませるように促すのだった。 コルベールは契約を済ませれば使い魔として従順になり危険はなくなるだろうと判断したのだった。 コルベールの促しを聞いたルイズは表情をパッと明るくさせ急いでマッドマンの傍へと行くのだった。たしかに奇妙な人物…… でも初めて魔法が成功した事、精霊を操る実力者、この人物が私の使い魔になると考えるとさっきまでの恐怖心は消え去り期待に胸を膨らませるのだった(物理的に無理だが)。 ルイズはマッドマンのお面を取ると意外と美形な男だったことに赤面しながらも無事に契約を済ませるのだった。